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ハルの記録

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この世でいちばん大事な「カネ」の話/西原理恵子

西原先生が7歳から過ごしていた街は、田舎で貧困層が多い場所だった。
夫は妻に向かって威張り散らし、妻は夫から受けたストレスを子どもに向けた。
そして子どもは、非行に走った。薬物も珍しくなかった。
楽しそうな大人が街にいなかった。だから私達もいずれあんな大人になるのかもしれない。
この街では、大人も子どもも、有り余るほどの閉塞感を抱えていた。

それでも、希望がないわけではなかった。
東京の美大に進学していいと親が許可してくれた。
けれど、父親の会社は予想以上に傾いていた。
そして、入試の日に父親は自殺する。

母親が工面したお金を持たせてくれ、なんとか上京できた。
東京の生活は、華やかでキラキラしたものではなく、夢や希望だけでは食べていけない現実を目の当たりにする。
一方、夢や希望を完全に捨て、やりたくない仕事をロボットのようにこなした挙げ句、体を壊す人もいる。

お金のためにどこまでの我慢ならいいだろう?
自分の夢や生きがい(働きがい)のために譲れない部分はなんだろう?
つまり「落としどころ」はどこだろうか?

漫画家という職業故に、普通の人とは違う感性を持っている面もあると思う。
けれど、この本の西原先生は、バランス感覚に優れた人という印象だ。

そしてとても優しい。
壮絶な体験を書く時、自分に酔ってしまい、読者を置いてきぼりにしてしまう人もいる。
(この件に関しては私にも思い当たる節がたくさんある)
西原先生は読者に「どうかしてるよね」「私も甘かったんだよね」等、
読者に直接言葉をかけながら文章を書いていた。

この本には、経済や金融などの専門的な話は一切ない。
文章表現も難しいものはない。
けれど、内容をきちんと理解し実行するのは、
もしかしたら専門的な話を理解するより難しいことかもしれない。

厄介なカネとの付き合い方は、厄介な自分との付き合い方に通じるのだ。

※その他の本の感想は、この記事の一覧表を参照して下さい。


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