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ハルの記録

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2018/03/07

今、思い返してみると、警察が容疑者を尋問してるかのようだった。
母が発する言葉のひとつひとつ、表情の細かな変化、声色の変化を絶え間なく監視し、何故そうなるのか、それは理屈にかなってない、納得がいかないなどと私は言った。
母は背中を小さく丸め少しだけうつむき、化け物や鬼を見るような怯えた目で私を見ていた。

PTSDの症状のひとつである怒りの爆発。
カウンセラーの先生は、「インドウさんの無意識が、溜め込んでる怒りを出すチャンスを常に伺ってるんだと思う。別人のように激しく怒ってしまうことは辛いと思うけど、それを責めるのではなく、”私の代わりに怒ってくれて、嫌な役回りを引き受けてくれてありがとう”と怒る人に感謝して、上手く手を組む方向でいこう」と仰ってくれた。
(注:私には別人格は存在しないけど、この表現がわかりやすいので便宜上カウンセラーさんが使った)
けれど、上に書いたような母の態度を見ると、
トラウマ持ちの私が家族にトラウマを植え付けてしまったという皮肉過ぎる事実に圧倒され、先生の言葉は雲散霧消し、たちまち遣る瀬無さが心を覆っていく。

怒りを我慢すれば症状が治まるわけではない。
もちろん特効薬もない。
PTSDに限った話ではないが、患者ひとりひとりに合った心理療法を模索していくしかないのだ。
けれど、自分に合った治療法が見つかるかどうか、今の段階ではわからないし、見つかったとしても、どれほど効果があるのかもわからない。

今日、私はバスに乗って地元の公民館近くで降り、そこで用事を済ませ、徒歩で歯医者に向かい、治療し、徒歩で帰った。
バスに乗ったら、おばちゃんが整理券取るの忘れてるよと教えてくれた。
公民館から歯医者に向かう途中、工事中の道路に差しかかり、交通整理の人に緑のシートを敷いた即席の歩道に誘導してもらった。
「(即席の歩道は)足元悪いですよねえ、気をつけてください」とその人は笑顔で言った。
即席の歩道とその先にある住宅街を通り抜けて、信号無しの横断歩道を渡ろうとするも、車が多くてあたふたしていると、車がすっと止まってくれた。
歯医者さんはいつものように優しく丁寧に施術をしてくれた。

私のいつ治るともしれない病気。娘の激しい怒りに怯える母。姉の怒りにうんざりする妹。
けれど、一歩出れば、それ以外の世界がたくさん存在することを改めて知る。
家族を傷つけた私に親切にしてくれる人がいる。
私の病気のことなんて全く知らないとはいえ、ただただありがたかった。
でも、私の体はひとつしかないから、帰る場所もひとつしかない。
私は私の意思が届かないところで、たったひとつの帰る場所を壊そうとしてるのか?
理不尽な暴力から逃げ、ようやく辿り着いたこの場所を。

私の体はひとつのはず。ひとつしかないはずだ。

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